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interview Vol.2

2018.10.08

人生の「矢印」を変えられるのは自分だけ Plus-handicapが目指す"一歩先"

「公平感を大事にする」が今の強みなんだなと思う

―次の質問に移っていいですか。留学日記の記事をきっかけに、ある意味、「新・Plus-handicap」「新生・Plus-handicap」がスタートしたと思うんですけど。

そこから今に至るまでの裏テーマ的なものっていうのは、どんなものだったんですか? 表向きには、やっぱり「生きづらさ」を掲げてますが。

佐々木:これ、他の人に言われて気付いたんですけど、今は「公平感」です。

―公平感? 万民が平等、のアレですか?

佐々木:その「公平」です。僕は自分の原稿のスタイルを「矢印をひっくり返す」ってよく話してたんですけど。「障害者が社会に対して自らの理解を求めるのであれば、障害者側も社会を理解しなきゃいけない」と、僕は思ってるんです。それがひっくり返すということ。
 
そういった持ちつ持たれつだったり、イーブンだったりするっていうところに、公平感っていうキーワードがもともとあるんじゃないかなって、最近感じてます。
 
「生きづらいひとのそばにいるひとの生きづらさ。」っていう原稿を書いたんですけど、

生きづらいひとのそばにいるひとの生きづらさ。


 

それを書いた動機も、「当事者ばっかりに焦点が当たるのは、ちょっとずるいよね」ってところから来ています。

―「ずるい」って、なんかよく分かりませんけど…。

例えば、職場で、うつで1人休職になりました、と。「じゃあ、その人の仕事って、誰がフォローするの?」って考えた時に、そのフォローした人に対して、社会はクローズアップしてないなと。
 
ちょうどこの記事を書いた頃、生きづらさを抱えた人に結構会ってたんですけど、「私、生きづらいんです」というアピールが強くて。「あなたの周りにいる人はどうなの? いつも支えてくれてありがとうとか伝えてますか?」と素直に思っちゃったんです。
 
「感謝」というより「尊重」という概念が近いんですが、自分の身の回りの人で、助けてくれてる人がいるんだったら、その人の立場も尊重すべきだって。これは、支援者が偉いとか、そういうことじゃなく、「その人の周りにいるみんなが、その人に対して何かをしているのであれば、平等にありがとうって言った方がいいんじゃないの? 自分ばかり辛いって言い過ぎは良くないよ」ってことです。
 
その分、その人が元気になった時、自分を支えてくれてた人が苦しんでいたなら、逆にフォローするっていうのが、僕の考える「いい社会」だなって。「このサイクル回すだけで社会は十分にいいものになる」って最近感じるようになってきました。

―矢印の話って、メディア立ち上げの頃の振り返りの中でも出てきましたよね。お話を聞いていると、新しい形で解釈し直した上で、実現化していっているって感じがします。

佐々木:そうですね。昔は、本当に槍を持って、ひたすら「メッセージで刺せ」ってやってた感じです。今はもっと戦略的に「こういう人たちのどこに訴え掛けると、膝から崩れ落ちるのかな」なんて考えます。戦い方が変わったんでしょう。特に、僕は。

―昔と比べて、理想的に反抗できてるなって感じますか?

佐々木:今の方が、タチ悪いなって思います。

―なるほど、分かりました(笑)

佐々木:Plus-handicap自体、「より皮肉る」っていうふうに変えてるかも。この間、「社会を変えるなんて言わない」って組織としての方針を決めたんですけど、それも皮肉ですよね。僕はシニカルなライターになりたいと思ってますし。だからひょっとしたら、今が一番楽しいかもしれないです。
 
あと、ちょっと嬉しかったことがあって。この間、AbemaTVに出たことをきっかけに初めて知ったことがあるんですけど、シッティングバレー(※6)をやってる方がうちのサイトを結構読んでたんです。
 
※6 シッティングバレー…パラリンピックの正式種目であり、コートの上に直接座って行うバレーボール。佐々木さんは日本代表として、アジア大会やリオの予選に出場したことがあるアスリートでもある。

「読んでますよ」とかって、なかなか直接言わないじゃないですか。ただ、AbemaTVに出演したら、「いや、実は前から結構読んでんだけど。今回、話を直接聞けて、佐々木さんがやりたいこととか、普段言ってることのニュアンスがやっと分かった」みたいなコメントをもらえて。
 
「頑張んなきゃなあ」っていう気が増してます。

―その「頑張る」っていうのは、具体的に言うとどういうところを、ですか。

佐々木:僕らって、フラットっていう部分にすごく強みがあると思うんです。
 
社会的マイノリティ属性を持つ人について書いているから、「Plus-handicapって、マイノリティの立場に寄った人たちなの?」っていうと、実際に文章読んでみたら到底そうは思えない。だって「当事者のみなさん、もっと頑張りましょう」みたいな内容ですから。
 
だから僕らって、企業側からしても、社会側からしても、ちょうどいい位置にいるんだと考えているんです。独特の浮遊感みたいなものを持っていて、いい意味でも悪い意味でもどっち付かずなんです。
 
そういうところが、さっき言った「公平感を大事にする」ってところに近くて。割と真ん中にいるから、どっちの目線でも物事を見れますよ、と。そこが本当に今の強みなんだなって思うと同時に、その目線が持てる人を増やすっていうのが、僕らの仕事として1つあるなと思ってます。今、僕が頑張りたいなと思うところはここですね。

 

「うちって期待されてんだな」って

―今思い出しましたけど、東京新聞でも、Plus-handicap名義でコラムの連載(※7)やってましたよね。あのいきさつと思いを振り返ってもらいたいなって。
 
※7 コラムの連載…2017年1月より、ライター陣が東京新聞紙上で「生きづらさって-プラス・ハンディキャップ通信」を連載中。現在は毎月第1・第3金曜日に掲載している。

佐々木:あれは、新聞社から問い合わせフォームに突然連絡入った、というのが事実で。僕らからしても「いや、ウソでしょ」みたいな。あそこって左寄りじゃなかったっけ、僕ら右っぽいけど? みたいな。
 
「面白いな」と思って、話を聞いてみたら、「当事者で発信してる人は多いけど、横断型で発信してる人がPlus-handicapさんだなって思った」って言われたんです。
 
「『障害者』『うつ』『LGBT』みたいな属性で取り上げているメディアもあれば、NPOもいっぱいあるけど、当事者を横軸で並べて情報を展開しつつも、それぞれのカテゴリに対して示しているコンセプトは大体一致している。それがPlus-handicapさんだから、連載をお願いしたい」って伝えられたのが、「やってもいいかな」と思った理由です。
 
でも、「10月から連載スタートしましょう」って言って、結果、1月まで原稿滞納してたっていう(笑)

―すごい話ですよね(笑)

佐々木:そこまで待っててくれた先方の寛大さを思うと、逆に「うちって期待されてんだな」って思ってます。自己肯定に敏感なので(笑)社会人として非常識だと周囲からは叱られてますが。

―求められてるっていうことの裏返し、ってことですよね。

佐々木:そう。だから、こう言っちゃ何なんですけど、だいぶ偉そうになりました(笑)

―「Plus-handicapって求められてるな」っていう実感を感じることって増えてきました?

佐々木:求められてるかどうかは分かんないです、正直。僕は求められているからやっているわけでもないし。
だけど「なるほど」って思うオファーは増えてきたので、そこには力を注ぎたいですね。あ、実感する機会が増えてきたってことですね。

佐々木一成(ささき・かずなり)
1985年、福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳で、今はシッティングバレーでパラリンピックを目指しており、2014年10月にはアジアパラリンピック日本代表に選出された経験を持つ。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。

Plus-handicap(プラス・ハンディキャップ)
2013年、「生きづらさをなくすためのきっかけ、仕掛けをつくる」「自分の人生の主導権を自分で握る人を増やす」ことを掲げて設立されたウェブメディア。生きづらさの総量を減らすための記事を公開する一方、企業や行政などと組み、生きづらさを抱えたひとの社会進出のきっかけをつくるプロジェクト事業にも取り組んでいる。
https://plus-handicap.com/