daily

interview Vol.1

2015.03.02

HAIIRO DE ROSSI 復活作「KING OF CONSCIOUS」で見出した”希望””祈り”とは

目指すのは良質な「ポップス」

―質問が少し変わりますが。椎名林檎の一番新しいアルバム『日出処』を結構絶賛されてますよね。あの人は最近、日本的な側面を結構打ち出してて、そこに共振する部分とかあるのかなと思っているのですが、いかがでしょうか。また、椎名林檎の語る言葉や歌詞の部分で印象的だったものはありますか?

HAIIRO:印象的な部分でいうと語彙力の豊富さがず抜けてる。作曲家としての技術なり知識もものすごく豊富ということも含め、総じていえば「音楽家としてのクオリティー」がとてつもなく高い。リリックというより、語彙力に圧倒されたっていうのが結構でかくて。
『日出処』の日本的な側面について、政治的な文脈をあらかじめ抜きにして、あくまでド真ん中の日本的な話という形で話しますね。僕はアルバムの中で一番好きな曲は「NIPPON」って曲なんですよ。細心の注意を払った上で、ちゃんとクライアントのニーズに応えてるっていう部分でプロフェッショナルをものすごく感じる。そこでやはり感動にも近いというか、嬉しいというか、そういう気持ちにはさせてくれます。

清野:『KING OF CONSCIOUS』のジャケットでHAIIROが着ているスカジャンに富士山とJAPANの文字が入ってるんですよ。これもメッセージ的なものなんですけど。

HAIIRO:そう、これは俺の提案だったんだよね。ジャパン入れてっつったんだよね。だってそのために俺このスカジャン買ったんだもん。
話を元に戻しますが。僕が椎名林檎さんの『日出処』をインタビューなどで絶賛しているのは、正直どう捉えられてもいいんですけど、僕がありたいのはポップス、それも「良質な歌謡曲」っていう意味でのポップスになることっていうのがすごくいいんじゃないかなっていうふうに思ってるからなんです。

―「ポップス」ってどういうイメージなのかうかがってみたいです。

HAIIRO:分かりやすく言うんだったら、僕が思うポップスっていうのは「音楽の共通言語」。例えそれが音だけだとしてもね。

レペゼンするものは個で違ってていい

―なるほど。『KING OF CONSCIOUS』でも「藤沢DNA」など地元の名前に冠したトラックとか出てきたり、東京についても楽曲で触れたりしていますよね。自分を育てた土地について具体的に聞いてもいいですか?

HAIIRO:これ、実はタイトルに隠れた意味があって、「藤沢DNA」のDNAって、野球チームの「横浜DeNA」とかけてるんですよ。だから横浜の人も聞ける、そして神奈川の人も聞けるっていう意味合いも隠されてます。
僕は藤沢市のはずれに昔住んでて。病気になってから引っ越したんですけどね。土地勘って、ヒップホップのリリックやトラックにすごい出やすいと思う。アメリカのヒップホップ聴いてもよく分かるように、ウエストコーストやデトロイトもそうだし、本当に特徴的なサウンドが多くて。
で、さっきもちょっと言いましたけど、僕は藤沢を神奈川として歌ってるし、神奈川として東京を見てるから。ローカルな視点で東京を見てるというより、47都道府県の1つとして見てるんです。そういう広い視野で聞いてくれたらいいなっていう。

清野:僕もちょうど横浜に住んでるんで、最初にアルバム聴いた時、「インディーズ」とこの曲が響いたんです。横浜や藤沢などと東京との距離感にすごくリアリティーあるんだよね。近いけど明らかに違う距離感みたいなやつがちょっとあってさ。

HAIIRO:それって多分神奈川じゃん。「神奈川感」なんじゃん。

清野:多分神奈川のいいところと悪いところもあって、それを結構ちゃんと言えてて。

HAIIRO:俺はこの曲で神奈川のいい面も悪い面も言ってるし、東京に関してもそれは同じだと思ってるけど。これを読んでいる人が学生だとして、クラスに40人いるとしたら、その人は40人のうちの1人なんですよ。1/40。つまり、1人が40人いるってことになるんです。
さっき1000人の話をしたじゃないですか。まったく一緒の話で、1000人という数じゃなくて、1人が1000人いるっていうこと。個なんですよ、あくまで。レペゼンするものとか、場所とかっていうのは、個で違っていいと思うんですよ。それは別に土地でもいいし、なんなら自分でもいい。
僕がこのアルバムを通じて最もレぺゼンしたかったものっていうのが、こうしてタイトルにもなってるし。だから、このキャップの「ROSSI as KOC」(※4)にも『KING OF CONSCIOUS』ってあるんですよね。

※4 ROSSI as KOC…HAIIRO DE ROSSIが生地の素材選びから関わった初のOFFICIAL CAP。キャップ・ハット専門店「7union」と世界を舞台に活動する書道家「万美」とのトリプルネームコラボで完成させている。

https://forteinc.stores.jp

僕の『KING OF CONSCIOUS』っていう称号はこれからもうずっと付いて回るだろうし、そういう覚悟なんですよ。覚悟があれば、なにを背負ってもいいような気がする。その上で、レペゼンするものに関してはくくりってないと思います。

次の作品のテーマは「無」になる?

―次の質問で最後になりますが、清野さんからの質問になります。

清野:最後は今後の未来について。今後のHAIIRO自身と「forte」レーベル、そして今年はどういう形でやっていくのかなっていうのを聞いていきたい。

HAIIRO:リリースしてから毎週ライブをさせてもらって、このインタビューでちょっとやっと一息つける状態になったんだけど、今までに学んだこととかすごくあって。

さっきの話にも出てきたけど、「素」ってつまりは人間の体ですよね、言っちゃえば。素の体の、その次、何にいくかっていったら、僕は無だと思ってる。なんか最近無になる瞬間が多くて、ぼーっとしてるってか、本当に何も考えてないんですよ。

それを、僕は「祈り」って言ってるんですけど。本当に祈ってるときって、何々できますようにとか、何々になりますようになんて祈んないですよ。本当は。

今年はライブをやりながら、制作もちょっとしようかなと思ってて。フルアルバムは恐らく出ないと思うんですけど、今のところEPで2つ案が上がってます、その仮タイトルが「空」って書いて呼び名は「から」。そして「禅」っていう計2枚を挟んで、『KING OF CONSCIOUS 2』を将来出せたらなって。現時点での構想ですけどね。

空とか禅とか、そこを経た上で多分無にいくんじゃないかな。今は想像段階だからすごく楽しく話せるけど、「無を作る」ってどういうことなんだろうって。その時の自分で今回のインタビューとか読んでみたいですよね。

清野:楽しみだね、形がないものを形にする。

HAIIRO:でもさ。それって音楽の根源だって。

―スケッチ的には何か作ってありますか?

HAIIRO:今は何も書いていません。でも、次の制作はもう始まってるんだと思います。僕の今回の制作は、どれだけ何も書かないか、具現化しないかっていうことなんだと思ってます。

HAIIRO DE ROSSI
21歳でデビューし2枚のアルバムを発表後、自身のレーベル「forte」を設立。2011年にリリースした3rd『forte』は「クラシック」として多くのリスナー、メディアから支持を得るも、鬱病とパニック障害発症のため、休養を余儀なくされる。2年の闘病を経て、2014年5月にシングル「Ready To Die feat. 般若」を発表。当作はオリコンインディーズチャート9位を記録し、各方面に復活を印象づけた。『KING OF CONSCIOUS』は再起後、初のアルバムとなる。
http://ameblo.jp/haiiro-de-rossi/

清野陽平(Yohei Kiyono)
“Maholova”という名義で音楽のアートワークなどのグラフィックを中心としたデザイン全般を手がけている。主な仕事に、XXX$$$のロゴデザイン, BROKEN HAZE「BROKEN HAZE VS B.BRAVO EP」, みみみ「もしもニアンファミリーズが一人なら」, Eccy「Flavor of Vice」など 。今回の「KING OF CONSCIOUS」ではアートディレクション・デザインを担当。
http://maholova.com/

写真:寺沢美遊(Miyu Terasawa)
1986年 横浜市生まれ。東京造形大学卒業後、フリーランスとして活動。過去の仕事に、lyrical school、DJみそしるとMCごはんのジャケット写真、一十三十一、(((さらうんど)))、ザ・なつやすみバンドのアーティスト写真など。
http://terasawarp.exblog.jp
miyuterasawa@gmail.com