interview Vol.4
2020.04.26
―さっきの質問でDavid Aguadoの名を挙げてもらいましたが、ほかにもご自身の周りで共感したり、好きだったりする作家はいますか?
しらこ:好きなイラストレーターは何人かいます。田中寛崇(※8)さんはかなり好きですね。構図とか、すごいカッコいいし、かなり攻めています。
※8 田中寛崇…新潟県出身のイラストレーター。青崎有吾『体育館の殺人』『水族館の殺人』(ともに東京創元社)などの装画を手がける。2018年には作品集『ENCOUNTER』(東京創元社)を刊行。
https://twitter.com/tanakahirotaka
駅のホームを女の子が歩いているイラストを最近Twitterに上げていましたが、女の子をすごい下の方にして、空間をその分かなり広く取っていて。そこに、駅のホームの天井や、パイプとかをひたすら描いていて、それがとてもよかったです。
『雨にすら不可能なこと』 pic.twitter.com/KslVgPTjoE
— 田中 寛崇 (@tanakahirotaka) January 9, 2020
単純に、かわいさで攻めていないので好きです。
―田中さんもクールですよね。
しらこ:画面を作っている感じがします。他にいないですし、真似できないですよ。イラストレーターになりたいと思った頃、よくポストカードを買っていて。だから、2019年6~7月の『イラストレーターズウィーク』(The Artcomplex Center of Tokyo)で一緒に展示できたのは、僕にとってとても大きかったです。
―あとはいかがですか?
しらこ:植田たてり(※9)さんは本当に素敵ですね。
※9 植田たてり…東京都出身のイラストレーター。2019年6~7月には、ダイスケリチャード、丸紅茜らとの展覧会『ILLUSTRATION Exhibition SESSION Vol.01「せいかつのふしぎ」』(DNPプラザ)が開催された。
https://twitter.com/ue_tateri
カチッ pic.twitter.com/zEY0iH5OrJ
— 植田たてり (@ue_tateri) October 15, 2015
あと、くまおり純(※10)さん。一番絵が上手いんじゃないかと思ってます。
※10 くまおり純…京都府出身のイラストレーター。2017年に作品集『ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK くまおり純』(翔泳社)を刊行した。
https://twitter.com/J_KMOR
バスが来るまで pic.twitter.com/ycbNDU9c7C
— junkuma (@J_KMOR) September 29, 2017
―分かります!
しらこ:坂内拓(※10)さんも、要素をなるべく削ぎ落とした、シンプルな画面作りがとても気持ちいいです。
※10 坂内拓…東京都出身のイラストレーター。TOKYOTAやSUNTORYをはじめ、書籍、雑誌、広告などのアートワークを手がけている。
https://twitter.com/TakuBannai
Underground アンダーグラウンド pic.twitter.com/YJwpkXWRnL
— 坂内拓 (@TakuBannai) February 22, 2019
―たてりさんも、くまおりさんも、坂内さんも最高ですよね! 好きなものに対してのスタンスがとても一貫しているように感じました。
しらこ:全体的に、人物はあまりデフォルメしない方が好きかな。
―イラストを取り巻く今の状況を見て思うことなどはありますか?
しらこ:iPadなどで描けるようになって、プロの作品もTwitterで見られるし、みんなが簡単にいい絵を目指せるようになっていると思っているし、それはよいことだと思います。
ただ、キャラ画でも風景画でもちょっとみんな似通ってきているのはあると感じています。「割とメジャーな描き方」があって、みんなそれに無意識に従っている、それがよいと思っているみたいなところはちょっと好ましくないなと思います。
―今後、挑んで制覇してみたいことはあったりしますか?
しらこ:結構あります。マンガはやりますし、音楽もやる予定です。
―「アパートメントラジオ」で、「DTMを昔やっていた」と聞いた時、かなりビックリしました。
しらこ:大学の時にダンスミュージックにすごくハマっていて。曲を作りたいなと思って、作曲ソフトを買って、ちょいちょいやっていたりしました。でも、しっかり形にしたことがないレベルなので、ほぼ未知です。
―その頃参考にしていたのは誰だったんですか?
しらこ:Avicii(※12)とか。有名なDJはかなり知っていて、Afrojack(※13)はすごい好きですね。
※12 Avicii…スウェーデン出身のプロデューサー。David Guettaとコラボした2011年の楽曲「Sinshine」は2012年の、同じく2011年の楽曲「Levels」は2013年のグラミー賞最優秀ダンス・レコーティングにノミネートされるなど、世界中で高い評価を受けた。2018年に28歳で死没。
https://avicii.com/
※13 Afrojack…オランダ出身のプロデューサー。日本では、三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEの楽曲「Summer Madness」を提供したことで名を知られる。
https://afrojack.com/
―結構意外です。EDM系というか、ビッグルーム系なんですね。
しらこ:そうですね。なかなかDJの名前通じる人がいないから少し新鮮(笑)。
でも、最近は好みが少しシフトしてきて。ダンスっぽい要素があるドロップの繰り返しを前提にしつつ、そういう中で音数が少なかったり、音の空間に広がりがあったり、優しい曲調になっているのがすごい好きですね。
―すごくいい(笑)。もう曲は作っているんですか?
しらこ:作り始めたところです。声が綺麗な友達と「一緒に音楽をやりたいんだ」って話をして、一曲分の歌詞だけカフェで作って。僕が曲を作らないといけない状態なので、それを進めていきたいと思います。
―楽しみにしてます! 最後の質問ですが、かつてと今で変わったことはありますか?
しらこ:この1年ぐらい個展があったので、他の漫画や音楽などの分野に手を出すのはよくないなと思っていて。後ろめたさみたいなものがあったんですよ。でも終わったので、今は自由です(笑)。
―ということは、しらこさんの名前を今後別の分野で見る機会が十分にあると?
しらこ:別名義でやるかも知れないですけど、可能性は上がると思います。
―もしかして未知のものに結構ワクワクするタイプですか?
しらこ:すごいワクワクしますね!
しらこ
岐阜県出身、東京在住のイラストレーター。現在は、ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)、中島信子『八月のひかり』(汐文社)など、書籍の装画を中心に活動中。青山塾イラストレーション科 第21期修了。2020年2月に初個展『ひとりでも楽しい』(HB Gallery)を開催した。